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ウィザードリィ日記 出会い編その2『ヤケになりだし着の身着のままが出会いだし』
 難攻不落の巨大城壁都市を中心に、広大な領土と強力な軍備を誇るトレボーという君主がいた。その飽くなき征服欲によって近隣諸国に恐れられ、彼は「狂王」とも呼ばれる。
 ある日、トレボーが出した布令はおよそ常軌を逸しており、その噂は領土内ばかりか遥か遠方の国々にまでに及んだ。こんな内容だ。


 『城に近接して建造された地下迷宮に潜む魔導師ワードナを倒し,魔除けを取り戻した者は親衛隊への入隊を認める。報奨金は5万ゴールド』


 ことの起こりは放浪の大魔導師ワードナが,無断でトレボー城塞のそばに巨大な地下迷宮を造り上げたことにあった。気性の激しいことで有名なトレボーはすぐさま親衛隊を中心に編成した討伐隊を迷宮に送り込んだのだが、いつの間にかワードナが召喚していた無数の魔物たちに部隊は全滅,そして逆にトレボーが寝室から先祖伝来の魔除けを奪われたのである。この魔除けに備わる力こそトレボーを無敵の狂王たらしめたものであり、諸国統一の野望に燃える彼にとって絶対必要な代物であっる。しかし、もはや親衛隊の精鋭を迷宮で失わせる訳にもいかない。そこでこの布令が出されたのである。自分の損失は一切なく,あわよくば魔除けと人材の両方が手に入る妙案であった。危険は大きかったが,貴族に等しい親衛隊に取り入られるという魅力に,城塞都市に多数の者たちが各国から集まった。


* * *


 ある日、たまたま通りがかった街に立てかけてある看板の前で、フロンティアが立ち止まった。はっきり言って、おれは文字が読めない。教育制度なんて発達してないし、文盲なんてのはこの時代別に珍しいことでもない。つまり、問題は、どうしてこいつが読めるのか、であるが。
 こいつは、どっかの国立神学校の講師だった。つまりインテリだ。本も何冊か書いているという。本!この時代、ようやく印刷技術が発展してきたというものの、それはまだ庶民には手の届かない、一部上流階級の特権のようなものだ。だから僧侶や魔法使いなんてものみたいなやつらは、わりと上流階級のやつに多い。おれらのようなパンピーは、戦士か盗賊、つまり自分の身体以外、頼りになるものはない。
 しかし、フロンティアが面白いことを言っていた。本の普及により、呪文書のようなものも次第に安価になってきた。一部のものが、一部のものに、口伝で伝えるなんてのは、もはや時代遅れなのだ。だが、そうやって魔法が大衆化すればするほど、段々と魔法の威力が落ちてきているそうだ。何故かはわからない。フロンティアいわく、もし魔法の供給源が一定だとして、使うやつは増える、それならまあ先は見えてるよね、だそうだが。確かにそうかもしれない。とある学者の学説に拠れば、各地の地脈に流れる魔力の濃度を調査した結果、明らかにここ最近薄くなっていることが判明した。これを「逆ホッケー現象」というらしい。
 エルフやらの昔からの魔法使役者は、そういった理由を盾に、呪文書の出版に反対し、出版社を焼き討ちするようなやつもいるそうだ。しかし、「逆ホッケー理論」なんてのは仮説に過ぎない。実際、魔力の供給源なんて存在を知っているやつなんざいないし、そんなものがあるのかどうかさえ判っていない。それは枯渇するものなのか?永遠に続くものなのか?仮説はあくまで仮説であって、そもそも魔力濃度の探知なんてものは非常に難しいし、魔力なんてものは未だ完全に誰も理解していない。それはただ、そのときちょうど揺らいでいただけなのかもしれない。議論は果てしなく、決定的な確証がない限り、平行性をたどるしかない。ただ、フロンティアいわく、エルフらのそういった活動は、魔法を使うやつが増えることで、自分達の特権がなくなることを恐れていたり、人間が魔力を使用して最近発明した「機械」というやつに脅威を感じている、ということだそうだ。その根拠としてフロンティアは、「逆ホッケー理論」を提唱する学者は、エルフのとある王国の御用学者だったし、それに反対する学者はまた、人間の王国の御用学者ということをあげていた。魔力の永続的使用、といったお題目は、そういった脅威やら特権維持のための手段なのかも知れない。ありそうな話だ。


 思うに、世界の平和を統一的に維持する機関というものがない以上、この世界の国と国は対等、つまりアナーキーの関係にある。自国と他国は対等であるが、それなら自分の存在意義は、自分の力の保持でしか確保できない。リアリスティックに考えるなら、自分以外の相手は敵であり、相手よりも力が劣るのなら、やられても指をくわえてみているしかない。なら、結局アナーキズムは、今のような小競り合いはあるものの面だって戦乱のない世界では、武力による自国の安全保障、専守防衛をもたらす。平和というのは、ただ戦争がない状態、といったわけではないのだ。そうやって、暴力の種はまかれて、やがて実をつけ、花を咲かすのだろう。しかし、不人情な話ではあるが、おれらのような冒険者にとっては、それはおまんまの種でもあるのだ。だから、エルフらの行動は、その行動原理を見た場合さして批判されることではないし、まあ、おれらのようなパンピーには判らない悩みというのもあるのだろう。


 とまあ、話は果てしなくずれてしまったわけだが、看板だ。フロンティア曰く、それはあの有名な布告だった。実際に話を聞いてみると実においしい話である。各地をぶらぶら歩き回ったり、フロンティアの研究でエルフやらドワーフやらの集落に行ったり、たまに大きな街に出てみたりと、そんな気楽な旅をしていたおれたちだったが、慢性的に金は不足していた。だから5万ゴールドと聞くと黙って入られない。ダンジョンに入れば財宝が見つかるかもしれないし、その分はそっくりこっちの懐に入るのだ。ワードナーやらなんやらには興味はないが、そっちには興味がある。フロンティアといえば、むしろ学問的興味から行きたいと思っているようだったが。
 そんなわけで、おれらはこの国に来たのだった。


* * *


「ねえねえ、じゃ、あなたたちも、目的はいっしょってわけかな?」


 と、ピースが言った。ピースが持ってきた朝食を一緒に食いながら、おれらがトレボーの布告を見てやってきたのだ、と言ったときだった。

 ちなみに、テーブルにはピースのほかに、もう一人女がいる。こっちは人間だったが。ピースが戻ってきたとき、こいつが後ろからついてきたのだ。多分、セブンスターとかいう相棒なのだろう。多分、というのはこいつが全然しゃべらないからだ。心なしか怒っているようにも見える。まさに魔法使いといったいでたちで、黒い髪、青い瞳、白い肌、うむ、ピースに劣らずなかなかの美人ではあるが、つんとすましたまま黙って飯を食っている。冒険者にしてはテーブルマナーは完璧で、それは優雅ですらあった。隣でフロンティアが手づかみで肉を食っている。


「実はね、この前一度地下迷宮に入ってみたんだけどさ、とーってもじゃないけど女二人では無理だったの。それでかよわーいあたしたちを守ってくれる戦士応募中だったのよ。あとあそこ潜るなら回復要員は絶対に必要だわ。あたしも一応使えるけど、やっぱ専門の人じゃなきゃねえ。ってわけで、僧侶も募集中だったの」


 話をして知ったのだが、なんとピースはビショップであるそうだ。上級魔法使いで、攻撃、回復の両方の魔法を操ることができ、知識も豊富でアイテムの鑑定もできる万能選手がビショップであるが、巷にはそんなに多くはない。おれたちは運がいいみたいだ。どうやら、パーティの誘いらしかったが、嫌も何もない。


「おー、それは奇遇だったね。ぼくらも丁度、そろそろ男臭いのに飽きてきたんだ」


「それが僧侶のいうセリフかっつーの。まあでも、おれも賛成かな。こいつと心中なんてのはまっぴらだしなあ。で、そっちは?」


 おれはさっきから黙って優雅に食事を取っている女に話をむけた。


「・・・べつに」


 とこれまた優雅。ピースが困った顔をした。


「んもー、なによう・・・不満があるなら今のうちよ?それともあたしたちのこと妬いてるの?さっきから愛してるって言ってるじゃない、もう許してよう」


「妬くかっ・・・ごほん・・・ただ、あたしは、ピースみたいに簡単じゃないから、勘違いしないでもらいたいってだけよ」


「ひ、ひどいいい様だわね・・・どうせあたしのこと、アバズレだなんて思ってるんだわ・・・」


「・・・べ、べつに思ってないわよ・・ただ、その・・・」


 怒ったり、うろたえたり、なかなかめんどくさそうなやつである。そんな女に満足したのか、ピースはおれらの方を向いて、


「あはは、はいはい、謝るからゆるしてちょうだい。ね、あなたたちもセブンにイタズラする気なんてないんでしょ?まあその前に殺されると思うけどねえ。この子ったら、国立の魔法アカデミー、主席卒業なの、あはは」


 と、最後に何気なく怖いことを言う。おれはともかくとして、相棒はどうだろうなあ・・・と思っていると、当人曰く


「ああ、そんなことか。パーティ組むとなったら、そりゃあ気を使うからだいじょぶだいじょぶ」


「お前が言うと、なんか信用ないんだよなあ・・・まあ、昨日のアレははずみみたいなもんだからな、なんでかは知らんがそのことで怒ってんなら謝るよ。魔法使えるやつがいてくれれば、おれらも心強い。まあよろしく頼むぜ」


「・・・べ、べつに怒ってなんかないわよ・・・はあ・・・わたしはセブンスターよ・・・よろしく」


 と言って、恥かしそうにセブンスターはそっぽを向いた。ピースがにこにこしている。


「あはは、どうしてもうこの子は・・・初対面の人にはいつもこうだから、あんまり気にしないでね・・・まあこれでパーティ結成ってわけね・・・んじゃ末永くよろしく」


といってピースは手を差し出してきた。わいわいと騒ぐおれらを横目に、セブンスターは、


「ふう」


とこれまた優雅にため息をついたのだった。


* * *


 そんなわけでめだたくパーティ結成、食後のコーヒーを飲みながら、今後のことについて話し合うことにした。


「あのね、実は四人でもまだ心細いわ・・・財宝の配分から言えば、ちょっと心配かも知れないけれど。でも、ここの王様なら気前いいでしょ。宝箱の罠解除ができる盗賊ともう一人くらい戦士が欲しいわね・・・」


 とピース。確かに、四人のままなら、守りも不安かも知れない。それに財宝の入っている宝箱には趣味の悪いトラップが掛かっている事も多いため、ダンジョン探索に盗賊は必須だ。


「ああ・・・そうかもしれんなあ。なんにせよダンジョンに潜るなら盗賊は絶対必要だ。じゃ、夜にでもなったら酒場にでも行こうか。その時間帯なら冒険者がたむろしてるはずだ。適当なやつに声かけよう」


「うん、じゃ、そゆことで」


 というわけで今後のことも決まり、しばらく埒もないことを話し合っていた。そういえば、ピースたちはどうして冒険しているのだろう、と疑問に思ったので尋ねることにした。女の冒険者というのはそんなに珍しいものでもないが、二人ともそんなことをするようには見えなかったからだ。ピースは少し困った顔をして、


「んー?・・・そうねえ、最下層にいるやつに・・・ちょっと用があるのよねえ」


「なんじゃそりゃ・・・報奨金目当てって訳か、おれらと一緒だな」


「あはは、身も蓋もないわね、その言い方・・・まあ、あたしの相棒はそうでしょうね」


「ピースは違うのか?」


「あはは、違うような、違わないような・・・」


 なんとなく言いたくなさそうだった。誰にでも言いたくないことはある。だから、おれたちもそのまま何も言わなかった。


「・・・今度はアタリだといいんだけどねえ・・・」


 空になったコーヒー茶碗を見つめながら、ピースが呟いた。それを聞いたセブンスターが、そっとピースの顔を見た。
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【2006/01/27 23:41 】 | ウィザードリィ日記 | コメント(2) | トラックバック(0) | page top↑
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コメント
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おおおお、おもしろいっすよコレ。キャラも立ってるし。ライトノベルにありそうなかんじ。城主はかなり憎らしい名前でありますな。
by:檜山 | URL | #pKfLfqHU【2006/01/28 18:21】 [ 編集] | page top↑
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おありがとうごぜえます。なんとか最後まで書き続けていきたいと思いますですはい。ちなみに職業や舞台、種族などの設定はウィザードリィ♯1「狂王の試練場」からまるパク。
by:平四郎 | URL | #dvQckJnQ【2006/01/29 00:55】 [ 編集] | page top↑
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